読書ブログで活躍されているブロガーさんが本書を「私の指南書」と語っていたので、気になって私も手にとってみました。
世界大学ランキングでトップに君臨するイギリスのオックスフォード大学。本書を読めば、オックスフォード大学の理念を一言で表す「常識を打ち破る」から始まって、OXONでの教え方を知ることができます。
※本書ではオックスフォード大学をOXON(オクソン)と呼んでいます。
著者の岡田昭人さんは同志社大学を卒業し、ニューヨーク大学大学院で異文化コミュニケーション学の博士号を取得した後、オックスフォフォード大学大学院似て日本人で初めて教育学の博士号を取得されています。
何かを人に教える人はもちろん、自分が何かを勉強していて、より良い学び方を知りたい!という方にもおすすめの本です。
私も現にボランティアで日本語を教えています。それに加えて、仕事で使うので中国語を勉強しており学習者でもあります。本書はどちらの目線からも参考になる点が多々ありました。
7つのチャプターに分かれているので、気になったチャプターだけまず読んでみてもOKです。
本書の目次
Chapter 1 日本にはない世界トップ校の「教え方」
Chapter 2 人と集団を成功へ導く「統率力」
Chapter 3 非連続の発送を実現する「想像力」
Chapter 4 チームワークで勝ち抜く「戦闘力」
Chapter 5 正解のない問題に向き合う「分解力」
Chapter 6 慣例や予定調和を打破する「冒険力」
Chapter 7 相手に最高の印象を与える「表顕力」
要約
印象的な言葉をピックアップします。
(▶︎:引用、 *:ブログ管理人の感想です)
日本人に欠けている「6つの能力」
〈Prologueから〉
- 統率力:自然に人の上に立ち、他のものをリードする力
- 想像力:模倣を繰り返し、そこから斬新な発送を生む力
- 戦闘力:相手の意思を尊重しながら、結果的に自身の主張を通す力
- 分析力:問題解決の近道として問題の所在を分析する力
- 冒険力:試練や苦難を糧として邁進する力
- 表顕力:自信を深く印象付ける力
*以上6つが日本人に欠けている能力として、チャプターごとに1つ1つ丁寧に解説されています。
私が特に気になったのは「冒険力」。そして初見で意味がわからなかったのが「表顕力」です。
調べてみると、以下の意味でした。
※表顕:具体的な形で広く世にあらわすこと。
教えることこそが最高の「学び」である
〈Chapter 1 日本にはない世界トップ校の「教え方」から〉
「ラーニング・ピラミッド」によると講義や講習を聞いただけの場合、内容のわずか5%しか記憶に残らないそうです。しかしなんと、「他人に教えた経験」による定着率は90%。
*「教える言葉一番身につく」これは以前聞いたことがあるけれど、90%という数字を突きつけられると余計説得力が増しました。
私もボランティアとして、オンラインでインド人やアメリカ人など外国の方に日本語を教えています。
毎回の授業は楽しそうに参加してくれているけれど、単語などあまり身についていないな…というのが実情です。
本書によると講義での記憶定着率はたったの5%。
まさしくその方法を私も行っていて、時間も限られているため一方的に説明して授業を終わってしまうこともしばしばありました。
ここで学んだことを活かして、生徒同士でペアワークをしてもらったり、一人の生徒が別の生徒に説明してもらう、と言った方法を増やしてみようと思いました。
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また本書では、人に何かを教える場合、学ぶ側の人に以下5つの点を心掛けさせると良いと書いています。
人に教える時のポイント5つ
- 紙に書かせる
- 自分の言葉で語らせてみる
- 適度な休息とエネルギーの補給
- 学ばせる内容を限定する
- すでに知っている知識に結びつける
*1番目の「紙に書かせる」について。私もある記事で、最近はもっぱらスマホやpcで書くことが多いが、紙に書くほうが圧倒的に覚えられると書かれているのを読んだことがあります。
また5番目の「すでに知っている知識に結びつける」について。
私の行っている日本語教師のボランティアにおいてどのように応用できるか、考えました。
例えば漢字の書き取りが出た時に、「以前習った○○が、この漢字の”へん”で使われているよ」など、既出の単語や漢字と結びつけて教えるようにしたら、もっと生徒さんが漢字など定着して身についてくれるかもしれない、と思いました。
相手と意見を「楽しく」ぶつけ合う方法
〈Chapter 1 日本にはない世界トップ校の「教え方」から〉
*ここでは意見をぶつけ合うのに、「楽しく」と書かれているのに引きつけられました。
▶︎一つのテーマに関して相互に批判することが、全体としての議論を深め、さらに高度な問題意識へと展開していく。
…こうした考え方の背景には、古代ギリシャの「対話法」があると言われている。
日本では義務教育の段階から「和を大切にしよう」などと教え込まれる。そんな中で著者は自身の大学の授業でも相互に批判させることを授業に取り入れているという。
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「相互に批判する」際のポイントは以下3つです。
- お互いしっかり向き合うこと
- 批判することは議論を深めること
- ゲーム感覚で楽しむこと
また同時に、他社の意見を批判する際の効果的な議論の方法を紹介しています。
- まず、相手が話しているときはよく聞いて、いったん受け止める
- 相手の意見全体を批判するのではなく、同意部分と批判部分を明確にする
- そして相手の意見の同意できない部分のみ批判する
- 最後に自分の批判して点に関して必ず対案を述べる
全てを最初から批判するのかと思っていましたが、1のよく聞いていったん受け止める。
2の同意部分と批判部分を明確にする。そして4の、批判したからには必ず対策案を述べる、というのはとても納得できました。
「ノブレス・オブリージュ」こそ「統率力」の源
〈Chapter 2 人と集団を成功へ導く「統率力」から〉
*マーガレット・サッチャーなど歴代の英国首相もOXONの卒業生であり、現在でも世界中で活躍する人々が数えきれないほどいます。
天皇陛下の徳仁様も卒業生だそうです。(恥ずかしながら初めて知りました。)
そしてOXONのリーダーシップには明確な共通点がみられ、それは一言で言うと「ノブレス・オブリージュ」を持っていることだといいます。
※ノブレス・オブリージュ:19世紀にフランスで生まれた言葉。「noblesse(貴族)」と「obliger(義務を負わせる)」を合成した言葉。 日本語では「高貴なる者に伴う義務や責任」と訳されています。
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本書で著書は「ノブレス・オブリージュ」とは、以下3つの特質を持った人だといいます。
- 社会全体に対する自分の役割と責任をしっかり認識している
- 誰に対しても分け隔てなく公平である
- 寛大かつ忍耐力がある
*なぜだかこの「ノブレス・オブリージュ」と言う言葉がとても印象に残りました。
(読書をすると自分の単語力のなさを多々実感しますが、、この言葉も本書で初めて知った言葉です。)
特に著者のいう「誰に対しても分け隔てなく公平である」と言う点。
私も自分が「高貴である」と思って(実際はそれとかけ離れていても、まず思い込むことが大切なので…!)日々の仕事や生活に向き合いたいと思いました。
退屈なひとり時間が想像力を産む
〈Chapter 3 非連続の発送を実現する「想像力」から〉
▶︎幼い時から宿題、習い事、塾などたくさんおことをしなければならない日本の子ども立ちは、想像力を育む機会を逃していると思う
▶︎想像力を鍛えるオックスフォードの散歩道
歩きながら考えるといいアイデアが浮かぶことがある
*現代人は常に忙しいです。
電車に乗っていても、自分も含めて乗客全員がスマホに目をやり、狭い画面と睨めっとしている時があります。そんな様子をみると、なぜだか残念に感じてしまうこともあります。
たまには電車の窓からぼーっと景色を眺めてみる。
ゆっくりと歩きながら、周りの景色を楽しむ。
そんなゆとりのある生活を、1日の数分だけでも心掛けたいと思いました。
日曜日は週末ではなく「週初」という感覚を持つ
〈Chapter 4 チームワークで勝ち抜く「戦闘力」から〉
▶︎月曜日からスタートダッシュをきるためには、日曜日の心の持ち方を「休息」から「準備」となるように変えていくことが必要。
…心がけるだけで気の持ちようが変わり、月曜の朝が苦痛にならなくなった。
▶︎週末は金曜の夜から翌土曜日の夜までと捉え、その時間帯にパーティーやコンサートにでかけるようにしている
*著者のようなエリートでも月曜日の朝が苦痛だったりするのだな、と少し親近感を覚えました。
私は土曜・日曜はカフェで本を読んだり、時にはハイキングに行ったりと、しっかり休息に当てています。
そして大きな声では言えませんが、月曜の午前中は「準備期間」として、週末休んでいた分の「回復期間」となっているのが現状です。
少し意識を変えて、せめて日曜の午後からは「準備期間」として捉えるようにしたいです。
冒険は毎日の簡単な「実験」から
〈Chapter 6 慣例や予定調和を打破する「冒険力」から〉
▶︎「生活がパターン化してしまうことは、思考力の低下を招き、新しいことを始める気力が低下し、思い切った行動がとりにくくなる」
*そんな思考力低下etc.を打開するために、いくつか日常生活の中で簡単にできるような「冒険」が紹介されています。
- 通勤・通学のパターンを変える
- 道の食べ物に挑戦
- 身体を動かし五感を活性化させる
- 小さなサプライズ:「驚き」の感覚をみがく
*私は「冒険」と言う言葉が好きです。それだけに「日常生活で取り入れられる冒険」に興味を引かれました。
そしてこのチャプターで特にやってみたいと思ったのは、「小さなサプライズ:「驚き」の感覚をみがく」のところです。
紹介されているように、先日職場の同僚にさりげなくお菓子を差し入れしてみました。とても予想外だったようで喜んでくれて、私も本人以上に嬉しくなりました。
▶︎小さなサプライズはどこにでも作り出すことができる。そのときは相手への気遣いを形にできるかが大切。これはクリエイティビティが働く瞬間でもある。
エリートは不安と苦悩を抱えたまま前進する
〈Chapter 7 相手に最高の印象を与える「表顕力」から〉
▶︎OXONのカレッジの外壁に「ガーゴイル」とよばれる人の顔をかたどった装飾を見かける。
ガーゴイルは「魔除け」の役割を担っていると言われていて、代表的な表情は「笑い」「熟考」そして「苦悩」の3つのタイプになっている
OXONの学生たちは「考えては喜び」そして「考えては苦悩し」を繰り返して来ていることが、ガーゴイルの表情から窺える。
だからこそ、OXONのエリートでさえも生活や人生に対する不安や辛さを抱えながら生きている。
***
*ここの一節に、なんだか少し救われた気がしました。世界のエリートでさえも悩んでいるのだなと。
私は昔から「悩むのが趣味」と言われ、どうでもいいことでもよく悩んできました。
悩まず楽しく暮らしたい!とは思いますが、そんな自分でも、そのままでもいいか、と思えた瞬間でした。
▶︎「恐怖・不安」は「安堵・安心」と表裏一体
「恐怖・不安」を抱えたままで前向きに生きていくための心掛け
- 他者に尽くし感謝の気持ちを忘れないこと
- 身の回りを清潔に保つ
- 規則正しい食事・運動・睡眠の習慣
- 物質的な世界から離れ自然と接する
- 焦らず長い目で計画を練る
- 仕事だけではなく自己表現をできるスキルを持つ
*上記は基本的なこともありますが、だからこそ大切な心掛けだと感じます。
教える側にある者が心に留めおくべき2つのこと
〈Epilogueから〉
- 見返りを求めてはいけない
- 教える者は相手に背を向けてはいけない
*私がボランティアで日本語を教えている時も、楽しくやっていますが、時々は少し辛い時もあります。
授業の直前で宿題を提出してくれたり、教えても中々身についてくれなかったり。
ですがこのEpilogueの言葉を読んで、身が引き締まりました。
教えることは時に忍耐が必要とされるが、それでも生徒のみんなが成長したなぁと思うときは、喜びもひとしおです。
本書で言われているように、「見返りを求めずに一生懸命に教える」ことに徹したいです。
まとめ
本書を読んで一番印象的だったことは、学習の定着率において、講義を聞いただけではわずか5%、自分が誰かに教えることによる定着率は90%、ということです。
私自身が行っている日本語教師、また中国語学習においても、この点を意識して取り組みたいと思います。
またエリートなイメージのオックスフォードの人々でも日々悩みながら前進している、というところに親近感が湧きました。
私もノブレス・オブリージュの意識を持って、悩みつつ前に進もう、と思えました。
読書レビュー:2023/7/15
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本書は2014年に発発行の後、2019年には加筆修正をされ、『人生100年時代の教養が身に付く オックスフォードの学び方』と少しタイトルを変えて、文庫本として発売されています。
こちらも見てみたところ、本書『世界を変える思考力を養う オックスフォードの教え方』と大枠は変わっていませんでした。
そして文庫本になり持ち運びやすくなっています。気になる方はこちらも見てみてください↓
書籍紹介
著者: 岡田 昭人 (おかだ・あきと)
東京外国語大学大学院総合国際研究員教授。オックスフォード大学教育学博士。
1967年生まれ。現在研究室は100名の学生が在籍する人気ゼミ。
卒業生には外務省、国連職員をはじめ、民間トップ企業の海外オフィスや教育NGOの要職に就く者が多い。「たけしのニッポン人白書」「爆笑問題のニッポンの教育」など、メディアに出演・協力多数。
価格:1500円+税
ページ数:271ページ
発行:朝日新聞出版
発行日:2014年7月30日