「ラクな仕事がしたい」なんて思うことはありますか??
私はあります。笑
そんなことを思いながら本屋で見つけた本。
「この世にたやすい仕事はない」
タイトルに引かれました。
そうだよなぁ、どんな仕事も大変だよなぁ。
と思いつつ、つい手に取りました。
(その後に図書館で借りました。(本屋さんすみません))
主人公は疲弊して仕事を辞め、5つの仕事をてんてんとしていきます。
すこしずつ立ち直っていく主人公に、なんだか私も励まされる内容でした。
本書を読んで気になった点を、抜粋・要約しています。
※3章の途中から、一部ネタバレを含みます。
まだ結末を知りたくないかたは、前半部分のみ読んでみてください。
本書の目次
第1話:みはりのしごと
第2話:バスのアナウンスのしごと
第3話:おかきの袋のしごと
第4話:路地を訪ねるしごと
第5話:大きな森の小屋での簡単なしごと
要約 (ネタバレなし&あり)
印象的な言葉などを抜粋、要約します。
※3章の途中までは、ネタバレなしです。
正直言って、第1話みはりのしごと の途中までは変化もなく、たんたんとしており、
あんまり面白くないなぁ
と思いながら読みました(失礼)。
しかし途中の展開からちょっと緊張感のある場面になってきて、そこから一気に引き込まれました。
他の物語も同様のパターン。
途中から不穏な空気になったりして、まんまと引き込まれていきました。
第2話:バスのアナウンスのしごと
▶︎風谷課長「ないと思っていたらある、ってことが続かないか?」(p.85)
最初読んだときは「???」という感じでしたが、風谷課長のこの言葉の意味が分かると「あ~なるほど!」と納得しました。
ミステリ!! とまではいきませんが、
本書の中で一番ファンタジー要素がある話だなと思いました。
第3話:おかきの袋のしごと
▶︎家に帰って自分の時間になっても、えんえんとネットサーフィンをしながら、これはネタになるんじゃないか、…
九十歳は顔をしかめるかな…
私はじょじょに、正門(まさかど)さんの戒めを忘れて、おかきの袋裏について考えることにのめりこむようになっていた。(p.153)
袋裏に「知っていますか?あなたの漢字」が採用され
「この仕事で、いうなればなんとなく掴んだなという感じがした」主人公。
主人公はそこからどんどんのめり込みます。
その熱量が伝わってきて、私もそこから ぐいぐい引き込まれていきました。
良かったなぁという気持ちと同時に、そこまでのめり込んで大丈夫なん?と、半分心配というか、見守るような気持ちもなりました。
私はこの「おかきの袋のしごと」が一番やってみたいです。
プレッシャーもありますが、みんなから評価などが分かりやすく、
仕事のやりがいがとてもありそう!と思いました。
【以下はネタバレあり!】
結末を知りたくない方は、本書を読了後に読んでみてください。
▶︎「御社のご商品の袋の裏側、いつも楽しみにしておりますわよ」
「さぞ教養の豊かな男性の方かと存じておりましたら、女性でびっくりしました」(p.183)
・・・?
ここを読んで、私の思考がしばらく止まりました。
なぜだか私はずっと、この主人公を「男性」と思っていたからです。
一人称がずっと「私」だったからか。。。
でも途中まで男性が主人公って思っていた読者は、私だけではないのでは?なんて思ったりもします。
本書原作のドラマも放映されています。
その内容を一部Youtubeで見たときに、主人公は女性でした。
しかしそこでは何も疑問に思わず、「あ~ドラマでは女性を主人公にしたんかぁ」なんて思って、原作の書籍でも女性が主人公という可能性が、1mmも思わなかったです。
うーん、思い込みってこわい。。
▶︎少しお休みになったらどうかしら、と、頼りにしておりますわね、は矛盾する、と気が付き、喉に何か詰まるような感触を覚えた。(p.184)
▶︎私がこっそり、この会社に相談を寄せたいくらいだ。
『やんわりと私の仕事を乗っ取ろうとする人が現れたんですが、どうしたらいいでしょうか?
上の人はまったくそのことに気が付いていないし、私も確信がもてません……』(p.185)
主人公が書いたおかきの袋裏の知恵袋によって、家族が救われたご婦人。
(旦那さんが登山で遭難せずに済みます。)
奇しくもご婦人の名前は、袋裏の記事のキャラクターと同じ「ふじこさん」。
そのこともあり、ご婦人はメディアにも出るようになります。
周囲もご婦人も袋裏の記事を書いては?という雰囲気になり、主人公はだんだんこのご婦人に仕事が奪われるような感覚を覚えます。
うーん、こわい。。
こういう人って、他の人には分からないように
当事者を苦しめていったりするんだようなぁ、なんて思いました。
第4話:路地を訪ねるしごと
▶︎『孤独に死ね』それが盛永さんに手向けられた言葉だった。
私にかもしれないが(p.232)
孤独なお年寄りに寄り添うとみせかけて、最終的には遺産などが目当ての『さびしくない』という集団。
主人公は町のあちちこに貼られた『さびしくない』のポスターをひっくりかえすことに燃えていきます。
仕事の依頼主は盛永さん。
しかし盛永さんの事務所入り口のシャッターに、ペンキで でかでかと
「孤独に死ね」
ということばが書かれます。
盛永さんと主人公は、『さびしくない』の会合に潜入をすることに…
『さびしくない』からの報復とかこわくないんかな、主人公も勇気あるな、と思いました。
そして『さびしくない』に潜入中の場面は、なんだか私まで、手に汗を握りました。
私はもともと多汗症ですが、さらに汗をかきました。
第5話:大きな森の小屋での簡単なしごと
私たちがやっていた仕事だけではなく、どの人にも、
信じた仕事から逃げ出したくなって、未知からずり落ちてしまうことがあるのかもしれない、
と今は思う (p.345)
うん、どの人もそんなもんだよね。
自分の仕事を100%好きな人なんて少ないよね、と、なんだかほっとしました。
まとめ&感想
タイトルに惹かれて読み始めた本書。
どの仕事も最初は「かんたんな仕事」として紹介されますが、実はどれもたやすくない。
どの章も短編で読み切りなので、気になった話から読み始めてOKです。
ただ数カ所で、前回の登場人物がゲスト出演します。
はやり王道として、初めから順番に読むと、物語全体をより楽しめると思います。
***
各章のものがたりでは毎回、少し手に汗握る展開に。
そして最後は、なんだかホッとする結末になります。
最後のさいごの主人公の言葉。
またそれを受け入れる日が来たのだろう。
どんな穴が待ちかまえているかはあずかり知れないけれども、だいたい何をしていたって、何が起こるかなんてわからないってことについては、短い間に五つも仕事を転々としてよくわかった。
ただ祈り、全力を尽くすだけだ。
どうかうまくいきますように。(p.347)
主人公が良い意味であきらめて、もともとしていた、社会福祉士としての仕事を再度始める決意をします。
ここの言葉が好きです。
まさに「人事を尽くして天命を待つ」だなぁと思いました。
(私も大学受験のときに、信頼していた数学教師の“がきちゃん”というおじさん先生に「人事を尽くして天命を待つ」ということばを教えてもらいました。
そのことばは辛い受験勉強中、ずっと私を支えてくれることになったのは、今でも忘れません。)
本記事がお役に立てば嬉しいです。
ここまで読んで下さりありがとうございました。
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書籍紹介
タイトル:この世にたやすい仕事はない
著者: 津村記久子(つむら・きくこ)
発行:日本経済新聞出版社
発行日:2015年10月15日
1,600円+税