【読書レビュー】「いるいないみらい」 ネタバレ有り!妊娠や子どもと向き合う5つの短編小説

読書:小説&エッセイ

[PR] 当サイトはアフィリエイト広告を利用しています。

スポンサーリンク
スポンサーリンク

子どもが欲しいか分からない…
妊活に疲れてしまった…

なんて思うことはありませんか?


窪 美澄くぼ  みすみさん著書の「いるいないみらい」は、いろんな立場の視点から妊娠や子どもについて向き合う、短編小説です。

***

私の周りではベビーラッシュ。
友人や親戚にも、どんどん赤ちゃんが生まれています。

でも私は、赤ちゃんが欲しいか分からない。。

可愛いとは思うけれど、子育ての大変さを思うと、「絶対欲しい!」とは言い切れない。

そんな迷いの中で出会った本です。

本書の主人公は、

・子どもは欲しくない妻
・子どもが欲しいか分からない夫
・子ども嫌いな独身女性
など…

いろいろな視点から、妊娠やこどもをもつことについて向き合っています。

本書を読んだ後は、明確な答えは出なかったけれど、それでもあたたかい気持ちになりました。
子どもがいてもいなくても、どちらでも幸せかもしれないと、思えます。

***

ここではあらすじや印象的な言葉などを抜粋、紹介していきます。

※ネタバレを含みます。
まだ結末を知りたくない方は、本書読了後に、本記事を読んでみてください。

目次で気になったところから、読んでみてください!


本書の目次

1DKとメロンパン

無花果のレジデンス

私は子どもが大嫌い

ほおずきを鳴らす

金木犀のベランダ

要約〈ネタバレあり〉

本書は5つの短編小説から構成されています。
ここでは3つのストーリーから、印象的な言葉などを要約・抜粋していきます。

無花果(いちじく)のレジデンス

主人公は結婚して2年目の会社員、宮地 睦生 みやじ  むつお(33歳)。

妻の波恵なみえ(31歳)の希望により妊活を進めますが、思うように子どもはできず。
波恵の気持ちに反して、睦生はまだ子どもを持つことに対して曖昧あいまいな思いしか持てていません。

検査をしに行った病院では「子どもが出来ない原因が自分にあるかもしれない」と告げられます。
ショックを受けた睦生は、波恵をおいて病院を飛び出してしまいます。

男性は遺伝子レベルで、そういうことを認めたくない一面があるのかな、と思いました。

睦生が病院を飛び出して以来、波恵との間で妊活の会話をされることはありませんでした。
ある日波恵から、「少し疲れちゃって、どっか旅に出てきていいかな。仕事は10日間くらい休めそうで」と言われます。

波恵は現在、英会話スクールで受付や事務をしています。
しかし結婚前は、旅行の添乗員をしていました。

波恵が場所も分からないところへ旅に出てからの数日間。
睦生は自由気ままに過ごしますが、だんだんと寂しさがつのります。

***

「あのね、宮地さん、私、一人で大丈夫よ」

睦生の上司だった牧村さんの奥さん、千草ちぐささんのことばです。

牧村さんは55歳の働き盛りでしたが、出張先のホテルで(おそらく心筋梗塞しんきんこうそくで、)とつぜん亡くなってしまいます。

牧村さんにたくさん可愛がられていた睦生。

牧村さんと千草さんには子どもがいません。
千草さんが牧村さんの後を追ってしまわないかという心配もありました。
牧村さんへお線香をあげに、千草さんの家へたびたび顔を出します。

そんな千草さんが、「梅雨が明ける頃に、姉家族もいる、故郷の山形に帰ることにした」と睦生に話します。

千草さんのことばが印象的です。

「子どもには縁がなかったのね。私たち。
…今は治療もいろいろあるんでしょう。それがうらやましいと思うこともあるのよ。

……こんな歳になっても、今の時代だったら、子どもを持てたのかもしれない、なんて考えることもあるしね。
子どもがいたら、牧村がなくなったあともこんなに寂しくなかったのかな、なんてね。

でもね、最後まで二人で過ごせた。私と牧村はそういう二人だったのよね。今はいい思い出ばかりよ。
強がりでもなんでもなくて…

ずいぶんたくさん喧嘩だってしたけれど、子どもがいなくてもね、どんな毎日もかけがえのない日々だった

私は子どもがほしい気もする。

けれど、もし いなくてもきっと楽しい毎日になると、千草さんに教えてもらえた気がしました。



「私、宮地さんならきっといいお父さんになると思うわ」

千草さん以外の誰かに言われたのなら、僕は無駄に抵抗したかもしれない。
けれど、千草さんが口にしたその言葉は、やさしく降る雨のように自分にしみこんでくるような気がした


***

波恵が旅に出てから1週間。
ある日の夜、波恵からビデオ通話で連絡があり、背景にはどこかの国の、夕焼けの海岸が映ります。

睦生は波恵に、素直に「寂しい」と告げることができ、波恵も帰ってくることを決めます。

***

「海外慣れしていない僕と違って、波恵はどんな世界の果てにだって、たった一人で行ってしまう人だった。そんな行動力と勇気のある波恵を僕は好きになったのだ。

…自由を奪われ、3LDKのマンションに縛り付けられたような気持ちでいたけれど、同じ間取りに波恵を閉じ込めたのは僕だ。

僕たちは若いようでいて、それほどもう若くはない
未来には限りがある
千草さんの言うように僕と波恵の毎日をかえがえのない日々にするのだ。」

私も旅好きで一人バックパッカーをしていた頃もあるので、
波恵にも親近感をいだきました。

このお話では、子どもが欲しい奥さんも、まだ欲しいかよく分からない旦那さんも、
同じように悩んでいるんだな、と気づけました。


ほおずきを鳴らす

「生まれたての赤ちゃんは弱いものでしょう。

大人が考えているよりずっと、ずっと」

「ほおずきを鳴らす」は、切ないストーリーでした。

***

主人公は製薬会社の営業企画課長の勝俣かつまた

23年前に幼い子の千夏ちなつは、まれに赤んぼうが感染する細菌によって、亡くなっています。

その後 奥さんとは離婚。

生まれたての赤ちゃんは弱いものでしょう。大人が考えているよりずっと、ずっと

という、元奥さんのことばが重たいです。

私も最近周りに赤ちゃんが増えたので、
このことばをしっかり胸に刻んで接しようと思いました。

***

幼くして亡くなった千夏が忘れられない勝俣。
しかし偶然公園で出会った女性との出会いと別れ をきっかけに、千夏の死とも向き合うことができます。

ありがとうとさようなら。なぜだか、成長した千夏にそう言われた気がした。

ほおずきを鳴らしてみようか。
実に自分の体温がうつって暖かくなっていく。
彼女がくれたその実が自分のどこかを温めていくような、そんな気がした。

本書の中で一番悲しいストーリーだと思いましたが、
終わり方はほっとあたたかいです。



金木犀(きんもくせい)のベランダ

夫婦で営むパン屋 子羊堂こひつじどう
その奥さんである繭子まゆこ(43歳)が主人公です。

「あなたはまだまだ働き盛り。
これからもっと働ける。パンを作るという職業があって、お店も持って。ほんとうにえらいわ。

昔はね、ふたつも選べなかった。結婚と仕事、ふたつ手に入れることは難しいことだったの。

今の人は結婚も、仕事も、子どもも、手に入れることができる。ほんとうにいい時代になった。
長生きして、それを見届けられて良かったと思う

ご羊堂の常連、節子せつこさんのことばです。

これまで私は、今の女性は すべてやらないといけない、今の人はとても大変。なんていう考え方をしていました。

でも節子さんのことばで、

そうか。
昔の人はできなかったけど、望めば全て手に入れられるんだ。

と、少し前向きになれました。


節子さんのことばが続きます。

「老い先も短いでしょう。

思っているのことはなんでも話すようにしているの。 あのとき言っておけばよかった、って後悔が私には山ほどあるのよ

……だから、あなたには言っておくわ。ご主人とはなんでも話をなさい。

怖がらなくていいの。大丈夫」

生まれてすぐ乳児院の前に捨てられ、施設で育った繭子。
「子どもが欲しい、養子を迎えるのはどうか?」という夫の栄太郎えいたろうに対して、本心を言えずにいます。

繭子は自分が施設で育てられ、周りの子どもたちが養子として選ばれる中で、自分はずっと選ばれない子どもだったと思っています。

栄太郎と自分が誰かを養子に選ぶと言うことは、選ばれなかった子どももいて、
その見知らぬ子どもの心に穴を空けること。
それは繭子が一番したくないことだと。

しかし節子さんのことばを聞いて、繭子は栄太郎に、自分の気持ちを少し話せるようになります。

わたしも家族や周りの大切な人には、思っていることは色々話したほうがいいなと思えました。


見上げると、頭の上に星がひとつ光っている。

この世界を照らす小さな光がいつまでもそこにあればいいと、ただ、それだけを思った。

本書の終わりは、いつもほっとあたたかいです。

一つ目のお話「1DKとメロンパン」と少し繋がっているので、そこも面白いです。



まとめ&感想

妊娠や子どもにまつわる5つのものがたり。

どのものがたりもはっきりとした結末ではありません。
けれど、みんなそれぞれ悩んでいるんだなと思うと、少し心が軽くなりました。

5つのストーリーとも、ほっこりと終わります。

本書を読めば、疲れた心もほっと和らぐかも知れません。
気になった方は、本書「いるいないみらい」も読んでみてください。

***

本記事がお役に立てば嬉しいです。
ここまで読んでくださり、ありがとうございました。

書籍紹介

タイトル:いるいないみらい
著者: 窪 美澄(くぼ みすみ)

価格:1,400円+税
ページ数:224ページ
発行:株式会社KADOKAWA
発行日:2019年6月28日




スポンサーリンク
スポンサーリンク
プロフィール

関西在住の30代OL。
「やりたいことが多くて時間がない!」
そんななかでミニマリズムなど通して時間を捻出し、
好奇心の赴くままに暮らしています。(でも人混みなどは苦手。)

◆ブログ
本の紹介や体験&素敵なお店などを紹介。
ゴールド免許のペーパードライバー。
原付&公共交通機関を駆使して旅へ。

◆趣味
読書/散歩/太極拳/断捨離
国内外旅行
(22カ国&42都道府県制覇)

◆語学
英語&中国語を勉強中。
日本語教師のボランティアもしています。

◆Xでは 主に 捨て活 や ミニマリスト に関して投稿

SNS
読書:小説&エッセイ
かわべりーcafe