私は20代で2年ほど、公民館で裏千家の茶道をならっていたことがあります。
しかし、表千家や裏千家の違い、茶道のルーツなどはなにも知りませんでした…
また仕事などで海外と関わることもあるので、日本人として日本の文化を紹介できるようになりたい!と思い、最近巷で人気の本書を読んでみました。
***
筆者は竹田理絵さん。
日本IBMにて勤めたのち、日本の伝統文化を伝えるために株式会社茶禅を創設されています。
ブルネイの国王即位50周年のイベント時に茶会を披露されたり、各国首相や大使館などなどからの信頼も厚く、お茶会を多数実施しているそうです。
すごい方ですね。。
***
本書では、茶道のルーツ・精神や基本的な作法、日常への茶道の取り入れ方。
さらに日本語でも違いが分からなかったことば(懐石料理・会席料理など)を知ることができました。
私はボランティアで日本語教師もしているので、日本文化で茶道を教える時にも、以前より自信を持って紹介できるようになりました◎
目次で気になるところから読んでみてください!
本書の目次
第1章 外国人が知りたい日本の文化・世界が憧れる日本のおもてなし
第2章 なぜエリートは茶道の虜になるのか
第3章 これだけは知っておきたい
日本の伝統文化「茶道」
第4章 ビジネスや日常に活かしたい
千利休の七つの教え(利休七則)
第5章 知っていると一目置かれる、日本人としての品格
第6章 知っていると自信が持てる
お茶会の作法ー楽しむための知識ー
要約
第2章 なぜエリートは茶道の虜になるのか
信長や秀吉が天下統一に取り入れた茶の湯は 戦国武将の憧れだった
▶︎なぜ名だたる戦国武将たちが、茶の湯に夢中になったのか?
それは当時の戦国武将にとって、茶の湯が教養であり、ステータスシンボルだったから。
しかし、一番の大きな理由は
明日をも知れぬ時代を生き、いつ敵の急襲を受けるか、味方の裏切りにあうかもわからず、
常に死と隣り合わせの日常にいた武将にとって、茶の湯は、唯一、心を穏やかにして安らげるひとときだったからです。
外の殺伐とした世界とは全くかけ離れた異空間、静寂で平和なお茶室の中、一椀のお抹茶を心静かに喫する。
その中で、自分自身と静かに向き合い、心を整え、平常心を取り戻していたのでしょう。
また竹田さんは、私たちも戦国とは違った意味ですが、毎日が落ち着かない不安の世の中を過ごしており、戦国武将のようにお抹茶によって心穏やかに平静な心持ちになることができたら、と話します。
第3章 これだけは知っておきたい 日本の伝統文化「茶道」
茶道の歴史、中国から伝わってきたお茶は薬だった
茶道=千利休のイメージが強いかもしれません。
そもそも「お茶」の歴史は、紀元前2700年頃の中国で、薬として飲まれていたことから始まったとされています。
日本に伝わったのは平安時代。
鎌倉時代に、臨済宗開祖の栄西が中国から禅宗と一緒に、お抹茶を飲む習慣を伝えました。
そして安土桃山時代にいよいよ 千利休 が登場。
利休によって、現在の茶道の形の「茶の湯」が完成しました。
明治時代では政界人や財界人にとってお、茶道の心得は必須教養でした。
その後、岡倉天心による「茶の本」(The Book of Tea)がアメリカで出版紹介され、「Tea Ceremony」として海外でも知られるようになりました。
表千家と裏千家は、離宮のひ孫から分岐した流派である
「おもて」や「うら」の違いは?
三千家とは:表千家、裏千家、武者小路千家 です。
元々は千利休を本家とした千家流茶道。
千利休のひ孫の代に三千家に別れました。
それぞれの違いは、
・お茶の点て方
・お茶道具を拭き清める時に使う袱紗という四角に布の色
・お客様にお抹茶を出す時に使う袱紗の大きさ など
またお抹茶を点てる、お手前の全体の流れはほぼ同じですが、表千家と武者小路千家は自然にさりげなくすすめます。
裏千家はメリハリをつけたお手前をします。
茶道の精神は「和敬清寂」の中に凝縮されている
「和敬清寂」
- 和:お互いに心を開き、和やかに周りと調和する心
- 敬:自らは謙虚に、そしてあらゆるものに対して敬意を払う心
- 清:茶室や茶道具を清潔にし、気持ちも邪念のない清らかな心
- 寂:どんな時にも静かで乱されることのない動じない心
「和敬清寂」を英語で訳すと
「Harmony, respect, purity and tranquility」です。
「わび・さび」は足りないことを美しさとして見出すこと
日本の精神としてよく聞く
「わび」や「さび」の意味は?
- さび:時間の経過とともに古くなり、色あせ、錆びて劣化していきますが、逆に古くなることで出てくる味わいや枯れたものの趣ある美しさを表します。
英語では「impermanent」 - わび:さびを美しいと思う心や内面的な美しさを表します。
英語では「incomplete」
漢字では「侘び侘び」と表します。
お茶室は日本文化の縮図だ
茶道ってお抹茶を飲むだけでなく
小さなお茶室の中に日本の伝統文化が全て入っているのですね
茶道は日本の総合伝統文化とも称されます
書(掛け軸・禅語)、お花、お香、お道具(陶芸・漆器)、建築(茶室)、庭園(露路)、和食(懐石・和菓子)、着物、歴史、文化、作法、精神性など
日本の文化がぎゅっと凝縮され、密接に繋がっているのです。
私も以前茶道と一緒に、着付けも習っていました。
着付けも、めちゃめちゃ奥が深いです…
昔の人のすごさもしれたので、習ってみて本当によかったです。
第5章 知っていると一目置かれる、日本人としての品格
和食 = 懐石。
懐石とは、お抹茶をいただく前にもてなされる食事のことをいいます。
懐石という言葉は、禅僧が修行中、空腹と寒さをしのぐために温めた石を懐に入れていたことに由来します。
懐石料理と会席料理。
どちらも「かいせき」。違いは?
- 懐石料理:お抹茶を楽しむ前に出される軽い食事。
お酒も出されますが、目的はお抹茶を美味しくいただくこと。 - 会席料理:お酒を楽しむことに主眼が置かれている。
懐石ではご飯とお汁は最初。
会席料理ではお酒を十分に楽しんだ最後に出てきます。
第6章 知っていると自信が持てる お茶会の作法 ー楽しむための知識ー
急にお茶会の場に誘われたら
最低限の持ち物として
白い靴下をご用意ください。
茶道の精神の「清」に繋がるもので、かかせないものとなっています。
さらに持っていくと便利なものとして「茶扇子と懐紙、菓子切り」の3点。
もう少し本格的にと思う方は、「袱紗古帛紗、数寄屋袋」をご用意しておくと安心です。
どうしてお菓子を先に食べるの?(和菓子のいただき方)
茶道で一番大切にしているのは、お客様に一服のお抹茶を美味しく味わっていただくということです。
そのため、先に甘いお菓子をいただくことで、口の中に僅かに甘みが残り、少し渋みのあるお抹茶をより美味しく召し上がっていただくことができます。
また、空腹の時にお抹茶をいただくと胃への刺激が強いため、その負担を和らげる目的というもの理由の1つだといわれています。
今日から簡単に取り入れる茶道の一歩(美味しいお抹茶の点て方)
和室で正座でなくとも、家のリビングやキッチン、職場のデスクでも簡単に楽しむことができます。
今日から気軽に、お抹茶生活を取り入れてみませんか?
用意するもの:お抹茶、大きめのお茶碗、茶筅、茶こし、茶杓(スプーンでもOK)
- お茶碗の中にお湯を入れて、茶筅もその中につけて温めます
- お茶碗の中のお湯を捨てて、ふきんで水滴が残らないようにふきます
- お抹茶を茶杓なら2杯、スプーンなら山盛り1杯(約2グラム)すくいます
- お抹茶は茶こしでふるいながら、お茶碗の中にいれます
- 80度のお湯を70ミリリットルくらいお茶碗に注ぎます
- 茶筅は殺陣報告に手首のスナップをきかせて、「m」の字を書くように泡立てます
- 約20〜30秒茶筅を動かし、ふんわり泡立ったらできあがりです
(裏千家では、泡立てる点て方をします)
皆さんオリジナルのお抹茶タイムを是非、お楽しみください。
疲れた心と身体を優しく癒す禅語
「脚下照顧」:お寺の玄関によくみかける言葉で、自分の足元をしっかりと注意してみましょうという意味です。
15分静かに目を閉じて瞑想するのもよいですし、丁寧にお抹茶を点てて、自分と向き合う時間を作るのも良いでしょう。
時間がない時こそ、時間をつくる
▶︎瞑想(マインドフルネス)の仕方
瞑想は今日のストレス社会において、心を落ち着かせるツールでもあります。
日々の生活に取り入れて、心穏やかに過ごしませんか。
- 調身(身を整える)静かに座り、目は軽く瞑り、背筋を正します
- 調息(呼吸を整える)自分の呼吸に意識を集中させ、腹式呼吸を繰り返します
- 調心(心を整える)呼吸に合わせて一から十まで数を数えます。これを繰り返して数え、雑念が浮かんできても追わない。再び意識を呼吸に戻します
おわりに(千利休のことば)
本書の最後は、千利休のことばで締められています。
「水を運び、薪をとり、湯を沸かし、茶を点てて、仏にそなえ、人に施し、吾も飲む
千利休」
ーー水を運び、取ってきた薪で湯を沸かし茶を点てる。
お茶は仏様に備え、お客様にも召し上がっていただき、自分も飲む。
それが茶の湯です。
まとめ&感想
私も数年茶道を習っていましたが、文化や歴史的背景など全く知りませんでした。。
本書ではルーツなど体系的に知れて、とても面白かったです。
そして読み終わったら、無性にお抹茶を飲みたくなりました。
お店でお抹茶と和菓子を買い、戸棚にしまいこんでいた茶筅を出し、久しぶりにお抹茶を点ててみました。
ほんの少しの時間でしたが、ふっと、ゆったりとした時間が過ごせました。
***
また私も少なからず、日常で海外と関わり合って生活しています。
仕事で中国と関わりがあり少し中国語を使ったり、英語を使いボランティアで日本語を教えたりしています。
また学生時代には、インドのマザーハウスという施設で1ヶ月間 ボランティアをしていたことがあります。
ヨーロッパのボランティアさんとの雑談で宗教の話になり「あなたの信じているものは何?」と聞かれましたが、日本人と仏教についてうまく説明できず、悔しかった思い出があります。
そういったことから、最低限 英語などで意思疎通ができることも大切だけれど、それ以上に自分の国の文化や歴史について説明できたり、自分の考えをもっていることが大切だなぁと、改めて感じました。
ここまで読んでくださりありがとうございます。
本書に出てきた「瞑想(マインドフルネス)」。
書道家である武田双雲さんの「丁寧道」という本でもマインドフルネスについて知ることが出来ます。
読書レビューはこちら。
書籍紹介
「世界のビジネスエリートが知っている 教養としての茶道」
著者: 竹田理恵(たけだ りえ)
株式会社 茶禅 代表取締役
一般社団法人 国際伝統文化協会 理事長
日本伝統文化マナー講師 茶道裏千家教授
和の教養や精神を身につけて、世界で活躍したいビジネスパーソンに対して、日本の伝統文化や茶道、和の作法で支援するグローバル茶道家。
神楽坂生まれの3代目江戸っ子。
青山学院大学文学部卒業後、日本IBMに入社。
退社後、日本の伝統文化の素晴らしさを伝えたいと株式会社茶禅を創設。
茶道歴40年、講師歴25年。
国内外メディア取材多数。
価格:1,500円+税
ページ数:288ページ
発行:株式会社自由国民社
発行日:2021年8月27日