原田マハさんの「楽園のカンヴァス」を読みました。
通っている太極拳教室の友達から
原田マハならピカイチでおすすめ!
と、太鼓判を押されたもの。
絶賛の通り、今まで読んだ小説の中でもトップクラスで好きな作品になりました。
ここでは備考も込めて、印象的な言葉などを抜粋、紹介していきます。
目次で気になったところから、読んでみてください!
要約
ネタバレ無し
物語は2000年、岡山県の倉敷 を舞台にはじまります。
そして 1983年のバーゼル(スイス)での出来事と、1900年代パリ での物語が交互に織りなされ、
最後は 2000年に戻り、ニューヨークで物語が終わります。
***
主要人物は二人です。
ニューヨーク近代美術館の※キュレーターであるアメリカ人のティム・ブラウン。
そしてもう一人は、アンリ・ルソーの研究者である早川織絵 。
フランスの巨匠 アンリ・ルソーの「夢」に酷使した作品の真贋判定を巡って、二人が対決します。
勝負は7日間。
またピカソも、ルソーを見いだした重要人物として登場します。
※キュレーター:美術館や博物館で展示企画や資料収集・研究を行う専門職 のこと
美術や芸術作品がメインのお話です
ネタバレ有り
以後はネタバレを含みます。
心に残った一節を紹介していきます。
▶︎織絵のルソーへの愛
アートは私にとって、世界中、どこででも待っていてくれる友だち。
そして美術館は、『友達の家』みたいなもの (P.231)
父親の仕事のため、幼少期から世界各地で過ごす織絵のことば です。
そんな素敵な考えがあるのだなぁと、感動しました。
「なんとなく、わかったんです。そのとき、ルソーの気持ちが。
彼はアートだけをみつめていたわけじゃない。
この世界の奇跡こそ、みつめ続けていたんじゃないかなって」
画家の目が、この世の生きとし生けるもの、自然の神秘と人の営みの奇跡を見つめ続けたからこそ、あんなにもすなおで美しい生命や風景の数々が、画布の上に描かれたのだ。
唯一無二の楽園として。
ルソーへの愛が伝わってきます。
▶︎ティムの正体
「どうしてわかったんだ?」
「詳しすぎたからです」 (p.395)
実はティム・ブラウンは、上司であるチーフキュレーター、トム・ブラウン(一文字違い) になりすまして、この真贋対決に参加しています。
ティムは織絵に、自分は トム・ブラウンでないと明かしますが、織絵はとっくに分かっていました。
なぜなら ティムが、アンリ・ルソーに詳しすぎたから。
(上司のトム・ブラウンは、アンリ・ルソーよりも、パブロ・ピカソの研究者として、世界的に知られています)
つづく織絵のことばも、忘れられません。
「この七日間、ルソーを巡るあなたの発言や、作品への着眼点には、長年研究してきた人間しかもちえないような知識と、深い洞察力を感じました。
……そして、愛情も」 (p.395)
この 織絵の言葉に、なんだか勝手に、ティムの長年の努力が報われた感じ、私まで感極まってしまいました。
そして本書は、最初の 2000年 倉敷 編 だけは 織絵の目線で描かれますが、
それ以降はずっと ティムの目線で語られます。
ティムの目からみた 織絵の姿が語られ、 織絵の内面の感情はわかりません。
織絵はどんな気持ちなんだろう??
と、そこも私が引き込まれていった要因でした。
▶︎君に会う夢
ふたりは、互いに、言葉を探してみつめ合った。
…
楽園のカンヴァスの前で、ふたたび、織絵とふたり、たたずむ夢。
夢を見たんだ。ーー君に会う夢を。
ティムの囁に、織絵がふっと微笑んだ。
その笑顔は、もう、夢ではなかった。(p.428,429)
本書は あからさまな 恋物語ではないのですが(むしろ”美術ミステリー”です)
最後の場面で一気に、本書が恋物語だったかのような気がしてしまうほど、ロマンチックに終わります。
アンリ・ルソーって?
そして 本書の 裏の主人公である フランスの巨匠 アンリ・ルソー。
実は本書を読むまで、どんな画家なのか、どんな作品を書いたのか、まったく知りませんでした。
アンリ・ルソー
1890年代後半から1900年代にかけて活躍した素朴派の代表格
なんと、ネットで「世界で最も下手な画家」と検索すると、トップにでてきちゃう画家なんです。
しかし、そんなルソーに注目し、ルソーやルソーの作品に情熱をそそぐ ティムと織絵。
二人のルソー愛が、ひしひしと伝わってきます。
私の美術レベル(低いです)と感想
わたしの美術知識といえば。
両親が美術館巡りが好きなので、たまに美術館へついていく程度。
まったく詳しくありません。
(欧州一人旅の際は、せっかくなのでパリのルーブル美術館や、バルセロナのピカソ美術館には行きました)
しかし そんな私でも…
原田マハさんの操ることば に どんどん引き込まれていって、
ところどころで、胸がぐっと熱くなりました。
メインである ティムや織絵だけでなく、アートに情熱を注ぐ アンリ・ルソーやピカソにも感情移入してしまい、
美術や美術館って素敵だな
と思うようになりました。
そして ルソーの作品を巡って、大きな組織が裏で行う争奪戦も緊迫感たっぷりです。
本書の終盤では、ページをめくる手を止められず
帰りの駅のホーム ベンチで1時間ほど、時間を忘れて夢中で読みふけっていました。
まとめ
本書を読んで始終、こころが震えました。
ティムと織絵、ひいては筆者原田マハさんの、ルソーを愛する気持ちに、終始 感情移入していました。
(つい先日 始めての倉敷旅行に行ったので、その点も本書に引き込まれた要因かも知れません。)
たった1冊ですが、何冊ものシリーズものを読んだような、とても充実感のある小説でした。
私はたいていの場合、一度読んだら満足してしまい、再読はほぼないのですが…
あのドキドキをまた味わうために、再読したいなとも思わせるほど。
本書を読めば、きっとアンリ・ルソーのや、美術の魅力に気づくこと間違い無しです。
ここまで読んでくださり、ありがとうございました。
原田マハさんのこちらの作品もオススメです。
書籍紹介
タイトル:楽園のカンヴァス
著者: 原田マハ
価格:670円+税
発行:株式会社 新潮社
発行日:平成26年年7月1日