先輩に紹介してもらい、初の原田マハさんを読みました。
「とても面白い」ということは常々聞いていましたが
うん、確かにこれははまりました!!
「目頭が熱くなるお仕事小説」という本書。
しかし同時に感動と胸キュンもさせてくれて、大満足な小説です。
私は読むのは遅い方ですが、通勤電車内で二日で読み終えてしまいました。
要約(ネタバレあり)
印象的な言葉をピックアップします。
▶︎スピーチの極意 十箇条 (本書より)
一、スピーチの目指すところを明確にすること。
二、エピソード、具体案を盛り込んだ原稿を作り、前文暗記すること。
三、力を抜き、心静かに平常心で臨むこと。
四、タイムキーパーを立てること。
五、トップバッターとして登場するのは極力避けること。
六、聴衆が静かになるのを待って始めること。
七、しっかしと前を向き、左右を向いて、会場全体を見渡しながら語りかけること。
八、言葉はゆっくり、声は腹から出すこと。
九、導入部は静かに、徐々に盛り上げ、感動的にしめくくること。
十、最後まで、決して泣かないこと。
以下ネタバレあり!
本書未読の方は、ご注意ください。
▶︎スピーチの導入部も、あくまで静かに始める。
初め方はさまざまだが、「ただいまご紹介にあずかりました」とか「ひとことお祝いを述べさせていただきます」のような、無駄な枕詞は極力避ける。
いきなりエピソードから始めてもいい。
結論を先に言ってしまってもいい。
とにかく、最初のフレーズがどんなふうに聴衆の耳に届くか。それでスピーチの印象が決まる。
出だしが肝心、ということですね。
第一印象はなかなか覆らない。
最近 中国語のオンライン留学(2週間)に参加して、修了式にクラス代表スピーチさせてもらいました。
でも本書と出会ったのはスピーチ後。
これらの極意を試せたらなぁ…と若干の後悔が残ります。
▶︎君には、スピーチのセンスがある。いや、センスっていうよりも、「心(マインド)」が。
すなおに褒められて、なんだか言葉が出なかった。うや、褒められたから、だけじゃない。
あんな風に、まっすぐに、みつめられたから•••。
おもわずきゅん。
仕事がんばるぞってだけでなく、こっち方面にも潤いが生まれます。
▶︎北原さんが聞けば聞くほど、ふたりのあいだに流れる空気の質が変わっていくような気がした。
こと葉のライバル、ワダカマの師匠である北原正子さん。
「リスニングボランティア」の草分けとして、お年寄りの言葉にひたすら耳を傾けます。
聞くことって実は話すこと以上に難しい。
聞いてるフリしてても相手にそれは伝わるし、全身全霊をかけて聞くのは、とてもエネルギーがいることだと、改めて実感。
▶︎遺品の中に、古ぼけた手帳があった。
…表紙をめくると現れる十八歳の娘の写真は、涙でごわごわになっていた。
手帳の1ページに、遺言があった。
生まれ変わってもあなたのお母さんになりたい
今度はいっぱいお話をしましょうね
大学教授である北原正子さん。
仕事に東奔西走している間にお母さんが老人ホームで亡くなります。
この一節を読んでなんだか胸が詰まり、すぐ、
久々に自分の母親に連絡を取ってみました。
▶︎どことなく優しげな光が宿った瞳。
「一番やりがいを感じることを、いまはひとつだけするべきだと思う」
ワダカマの言葉は、戸惑い喘ぐ心にぽつりと落ちてきた一粒の雨のようだった。
それはすうっと広がって、胸の奥底にじわっと吸いこまれていった。
言葉選びが秀逸だなぁ…
そんな言葉とため息が溢れます。
▶︎『困難に向かい合ったとき、もうだめだ、と思ったとき、想像してみるといい。
三時間後の君、涙がとまっている。二十四時間後の君、涙は乾いてる。
二日後の君、顔を上げている。三日後の君、歩き出している』
緊急事態に面して混乱すること葉に、師匠の久遠久美さんがかける言葉。
久美さんも生涯もっとも尊敬していた人からの言葉だといいます。
私も何かピンチが起きたときに、心に留めたいです。
▶︎いま、わかった。ようやく、わかった。
どうしていままで、あの人に反発して、そして魅かれ続けたのか。
私、その人が好きなんだ。
賢くて、強い。優しくて、潔い。
そして、うんと大きい。
緊迫するシーンなんだけど、そんな中でこと葉が自分の気持ちに気づく場面。
ここも好きなシーンです。
▶︎「でも、いまは?」ふと、私の目を覗き込んで、ワダカマが囁いた。
「いまは誰に惚れてるのかな」
原田さん、最後まで読者をきゅん!とさせるのを忘れません。
まとめ
最後の最後は、伝説のスピーチライター・久遠久美のごく短い、けれども心にしみ渡るスピーチで締め括られ、胸がじわっと熱くなりました。
仕事に対して、がんばろうという気持ちにさせてくれる一冊。
と同時に読者をきゅんとさせることも忘れていません。
これから原田マハさんの色々な小説と出会っていきたい。
そんな原田さんの最初に一冊となった。
こちらもオススメ。
原田マハさん他の本も、負けじと面白いです!
書籍紹介
著者: 原田マハ
1962年、東京生まれ。伊藤忠商事、森ビル森美術館設立準備室、ニューヨーク近代美術館勤務を経て、2002年独立後フリーランスのキュレーターとして活躍。05年「カフーを待ちわびて」で第1回日本ラブストーリー大賞を受賞。他著書多数。